約 586,710 件
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/426.html
「ククク、惨めなものだな。両足を折られては、もはや立つことすらままならぬか?」 そこには、足を押さえうずくまるダンカンと、それを見下すバルガスの姿があった。 「し、師匠!?バルガスさん!?」 「き、来てはならぬ!マッシュ!」 思わず、駆け寄ろうとするマッシュであったが、ダンカンがそれを制した。 「動くな!動けばこの男を崖から突き落とす。」 「クッ!バルガスさん、一体どういうつもりです!?」 「…答える舌はもたん。ここで屍となる貴様にはなぁ!!」 バルガスのダンカン流にはない、つまりマッシュの見たことのない構えをとった。 「くらえ!我流奥義!連風燕略拳!!」 バルガスの周囲の空気が、突き出したバルガスの両の掌の中で球状に圧縮されていく。 そこから竜巻といってもよいほど、強力な突風が巻き起こり、マッシュを襲った。 「うわぁあぁあ!」 必死に防御したマッシュであったが、あまりに強力な風を受け、吹き飛ばされ深い谷へ落とされてしまった。 「くそ!マッシューー!!」 とっさの判断でダンカンも、バルガスの一瞬の隙をつき自ら谷に飛び込んだ。 「自ら、死を選ぶとはな…。それがあんたの宿命か…。」 バルガスはそう吐き捨て去っていった。 「大丈夫か…?」 ダンカンは崖の中腹に突き出た木の枝を左手に掴み、右手でマッシュの右腕を掴んでいた。 しかし、人二人を支えるにはその枝はあまりにも細すぎる。 「し、師匠…!手を離してください!今離せば、師匠は助かる!このままじゃあ二人とも…!」 二人の耳には、激流で有名なレテ川支流の轟音が響いている。 この高さから落ちれば、まず助からないだろう。 「ふっ…バカ弟子が…。そんなこと出来るわけなかろう。」 枝は早くもしなり、メリメリとひびが入り始めていた。 「…わしは、お前と同じくらいバルガスの素質にも惚れていたんじゃ…。 それにお主らは、わしと違ってまだまだ若い…。 二人で互いに競い高めあえば、わし超えさらなる高みへ近づけると思っていたんじゃがのう。 …本来ならわしの責任かもしれんが…。 マッシュ、わしからの最後の頼みじゃ、バルガスを、あの子を止めてくれ…。」 「師匠…まさか!」 その瞬間、二人を支えていた枝がついに折れた。 「むぅん!!」 ダンカンは最後の力を振り絞り、マッシュを天高く投げ上げた。 「し、ししょー!!!」 マッシュの叫びもむなしく、ダンカンは微笑みながら虚空のかなたへ落ちていった。 「バルガスさん…。いや、バルガス!おれはあんたを許さない!絶対に!!」
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/662.html
まずい。 クラウドの今の心情を表現するとしたなら、この一言だった。 尋常ではない殺気を放つ2人組に追いまわされ、逃げきれたと思ったところへ間が悪い事にモンスターの群れが襲来し、 それに乗じて謎の追手は完全に追いついてきた。すぐ近くまで来ている。 そう、その声が聞こえるほど、近くに。 「母さんはどこだぁ?」 謎の襲撃者の片割れがクラウドの隣まで来て並走し始めた時、はっきりとそう問いかけてくるのが聞こえた。 重く低い、どこかで聞いたことがあるような声だ。 見ると、バイクに乗っているのは屈強な体つきの男で、左腕に鍵爪のような武器――スタンクロー――を装着している。 彼がその左腕を振り上げると同時に剣で防御体勢をとり、クローの一撃を受け止める。 剣と爪とが触れ合って火花を散らし、クラウドは振り払うように剣を一閃させて引き離す。 と、同時に、逆の方向からもう一人が大型の短銃――ナイトメア――で銃撃してきた。 今度はバイクの車体を倒してなんとか回避するが、その隙に更に接近される。 「兄さんが隠してるんだろ?」 語りかけてくる。 先程の声と比べて、こちらは冷たく、鋭い。だがやはり何処かで聞いたような気がする声だ。 銃を持った追手は、クラウドが車体を起こしたところを狙って銃身で殴りつけてくる。 クラウドは剣で受け止めるが、爪を装着したほうの追手が逆側から迫って来た。 挟み撃ちの状態から脱け出すため、一瞬だけ減速する。 こうすることで2人からの攻撃は回避できたが、今度はモンスターが攻撃してくる。 クラウドが跳びかかってくる獣を斬り捨てる間に、またも2人の追手が彼に並んだ。 彼らの戦いを、カダ―ジュは丘の上から見物していた。 彼はしばらくの間楽しそうに荒野の追走劇を眺めていたが、やがて手に持っていた携帯で誰かを呼び出し始めた。 「ああ、あんたか。いきなりごめんね。ちょっと話したい事があるんだけどさぁ」 相手に繋がるや否や、勢いよく話し出す。 「彼、なんだか母さんのことを知っすらいなさそうなんだけど、どういうことかな?」
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/352.html
ロックは彼らの会談を無表情で眺めていた。極力感情を表に出さないように。自分を抑えていなければ、反射的に飛び出してしまいそうになったからだ。 彼自身も帝国に対して良からぬ感情を抱いている。ロックだけなく、この世界に生きる人間ならば今のガストラ帝国を快くは思わないだろう。それくらい、奴らは暴虐の限りを尽くしているのだ。 中でもあのケフカという男は帝国の悪しき部分を具現化したかのような男だ。いやらしく、ずるがしこく、他者を踏みつけることで満足を得る。 一国の主とはいえ、あんな男と立派に外交してみせるエドガーはある意味尊敬に値する。自分だったら、あの男のヒョヒョヒョ笑いを聞いた瞬間、反射的に拳を鼻面にぶち込んでしまいそうだ。 そんなエドガーも、こちらに戻ってきた時は明らかに苦々しげな表情をしていた。ロックはその顔を見て不謹慎にも僅かに安堵した。彼だって、感受性豊かな一人の人間なのだ。内心では自分以上に腸が煮えくり返っているのかもしれない。 「気に食わない奴らだな」 「ああ、あの薄汚い面に新発明のドリルをぶち込んで黙らせてやりたいくらいにな」 エドガーが軽い口調で冗談(あるいは本気かもしれない)を言ったので、二人は拳をつき合わせて小さく笑った。 しかし、すぐにエドガーは真剣な表情に戻り、 真っ直ぐな目でロックを見た。 それだけで彼の言わんとしていることが理解できた。 「奴ら、本気なのか?」 「明朝……早ければ今夜中だ。準備は万全を期してるが、念のため最終確認に入る」 ぞわり。体内の血が騒いだような気がした。 「あの娘を頼むぞ」 そういい置き、エドガーは振り向かずに背後の門を潜った。ロックは軽く頷き、一目散に走り出す。 奴らが求める少女。ティナのところへ。
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/1156.html
音がした場所はバブイルの抜け道のある方向、要するに今までの順路を道なりに進んだところであった。 前に頼もしい二人がいることに加え、今まで進んだ道を引き返すわけでもないのでリディアの手を引きつつも 迷うことも魔物に襲われることもなく女性二人で辿りつくことが出来た。 その場所は今までと同じく、薄暗い闇に閉ざされた場所である事は間違いなかった。しかし、これまで通ってきた 場所とは違って開けた広間のようになっていた。 その場所に銀の太刀筋と共に斬撃音が鳴り響く。先ほどセシル達が聞いた音の原因はこれであることは間違いないであろう。 「誰か戦ってるの?」 リディアが不安げに尋ねてくる。良い雰囲気ではないのは察したのだろう。 「ああ……」 カインが頭を縦に振る。 「だが、時間の問題だろう」 それはセシルも同感であった。 先の広場は闇で閉ざされてはいるが定期的に舞いあがる炎が明かりとなり定期的に様子を 伺う事が出来た。 うっすらとした闇の中でも目立つ白装束の男が両手にそれぞれ太刀を構え、対峙する相手へと その矛先をむけていた。 「エブラーナの忍者というやつか」 二刀流という特殊な剣術を使いこなす他にも擬似的な魔法ともいえる忍術を操る者―― 異国と呼ばれる地エブラーナの戦術はバロンにも届いていた。 今、この場を照らす炎はあの者の忍術なのであろう。 「あの男……乱れた剣筋だな……」 それはセシルも感じていた事であった。先ほどからあの忍の戦士の攻撃はひたすらに 一辺倒なのである。 「怒りに身をまかせている。あのままでは」 それはかつてのカインや自分のようであった。己の中の感情だけに捉われて回りを見据えていない。 その戦い方は相手に手の内をばらしているのと同じなのだ。 「あのままでは負けてしまうな……」 「助けましょう!」 セシルの言葉を引き継いだカインの冷静な台詞にローザが反応する。 さしづめ国を滅ぼされた恨みを込めた打倒といったところであろうか。だとすればその者が 相手をするならばゴルベーザの手の者だということになる。 どの道、目的を同じくする者だ。協力し合うのも悪くはないし、目の前で誰かがやられるのを 黙って見てるのもいい気分ではない。 「しかしどうやって助けに入る?」 一対一の戦いとはいえ、混戦を極めている。それにあのエブラーナの男の元に急に割って入れば、 誰彼構わず攻撃を仕掛けてくるかもしれない。 エブラーナ7
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/474.html
「団長、後ろをご覧なさい」 振り返ると、背後には整然と立ち並ぶ騎士達の姿があった。よく知った顔も、嫌いな顔もあり、 幼い頃に憧れた者の顔もあった。誰一人として彼より若いものなどいない。その全員が、自分に 敬礼をしているのだ。カインは身震いした。 「副長……彼らが私などを認めるはずがありません。私には……」 「ご子息」 副長は、彼ら二人だけの間の暖かい口調で囁いた。 「貴方はご自分の名をお忘れか?」 そうして彼は、カインの持つ槍の柄をゆっくりとなぞった。槍は美しく磨き上げられており、 そして、かつては血糊で見えなかった、柄に刻まれているその文字をカインは見た。 ハイウィンド。 胸が震えた。先程の震えとは違う。身体の底から、突き上げるような震え。 血が騒いでいるのだ。カインは悟った。そして槍を強く握りしめると、ふいにその重みは風の ように消え失せた。 ハイウィンドの血が、カインの右腕を高々と押し上げた。 「────騎士団に栄光あれ!!!」 『騎士団に栄光あれ!!!』 騎士達は沸いた。若き騎士達はその威容に見惚れ、往年の団員達は懐古に胸を焦がした。 誰もが確信していた。竜騎士団は不滅だ。誇り高き騎士団に、栄光あれ。 王を失った竜達は、あらたな王の帰還に雄々しく吼えた。
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/93.html
「…さ、流石に熱いな…」 日の光も届かない闇の洞穴をやっとのことで抜けたかと思うと、 今度は砂漠を照らす灼けるような昼の日差しが彼らを襲った。 おまけに丸一、ニ日も松明だけを頼りにしていたせいで、目が痛いほどに眩しい。 「年寄りには答えるわい。早くダムシアンへ急がねばな」 ローブで体を隠して日差しを避けながら、テラ。 「しかしここからは」 セシルが老人をふりかえる。 「ダムシアンまでかなりの距離があります。徒歩では少なくとも一日はかかるでしょう」 「ふむ…」 確かに、手元の地図によると、この地下水脈とダムシアンの都は随分離れている。 カイポへと辿りついた時のように運良くキャラバンなどに遭遇出来ればそれにこした事は無いが、そんな偶然に何度も遭遇できるとは思えない。 「砂漠のど真ん中での野宿は覚悟したほうが良いかも「多分それはしなくていいと思うよ」 セシルは思わぬ方向からの声に、少し面食らった。 何かと思っていきなり口を挟んできたリディアの方を見やると、彼女はどこから連れて来たのか、一羽のチョコボに跨ってこちらを見下ろしていた。 「…チョコボ…?」 「うん。チョコボだよ」 呆気に取られるセシルに、さも当然そうにリディアが答える。 「あ、いや、その、だからね、そういうことじゃなくて、何処にいたの?そのチョコボ?」 「幻界」 え、ゲンカイ?聞きなれない単語に、またも呆気に取られた。 その様子が可笑しかったのか、いたずらっぽくクスクスと笑いながら、リディアは続ける。 「幻界っていうのは幻獣のすんでる所。 知らないの?チョコボって、元々は幻獣なんだよ?」 「…それで、今召喚したと?」 セシルよりはある程度おちついていたテラが、そう尋ねる。 「そ。ここから歩くと疲れると思って」 にっこりと笑う少女を前に、騎士と賢者は顔を見合わせた。 …やっぱり、この子はすごい。
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/1135.html
「!」 今にも消え入りそうな声の正体は、今までの間ずっと口を詰むんでいたローザであった。 それだけでも充分に驚くべきことであったが、発せられた言葉の内容はセシル達を更なる驚きへと誘った。 「どういうことだ?」 「私じゃなくて彼女に聞けばどうかのう~?」 別に誰かに質問するつもりで口を開いたわけではないが、最初に疑問への返答をしたのはルゲイエであった。 「ローザ……」 振り返った先に見えた彼女はすっかりと意気消沈し、今にも消えてしまいそうに小さくなっていた。 「そこにいる人――ルゲイエ先生は私の恩師なのよ」 視線が答えを求めている事が分かったのだろう。彼女は少しの間を経て口を開いた。 「まだ私がバロンの学校で白魔道士を目指していた頃だった。そこで私はルゲイエ先生に出会った」 「学校?」 今一事情が呑み込めないのか、リディアが尋ねる。 「私達――セシルやカインはバロンの学校に通っていたのよ」 「だから学校ってのは?」 「共通の目的を持った人達が皆で集まってお互いに交流を交わしたり、共に教養を深めていくところよ」 リディアの質問は、ローザの過去の詳細でなく学校という機関そのものに対しての疑問だったのであろう。 「ふ~ん。じゃあ先生ってのは?」 「そうね、あなたにとっての幻獣王様みたいなものよ」 「幻獣王様?」 唐突に聞きなれた言葉が出て驚いたような口を上げる。 「教える者と教え合うものの間柄って事かな? だったらおかしくない? 学校ってのはお互いが高め合う場所なんでしょ? 例えばミストの村ではかあさ――召喚士達は皆で集まってお互いに修練し合うことはあったよ。でもそれは皆が教えあう雰囲気 だったし。わざわざその先生っての――この場合は幻獣王様のような存在はいなかった」 説明はリディアに相次ぐ疑問を与えるばかりである。 「人生の先輩とでもいうのかしら。学校という場所はあらゆる人が集まるの。嘘をついたようになるけどさっき学校は共通の 目的を持った人が集まるっていったけどね。正しくはそうではないの」 悩める彼女にローザは少し考えてから言った。 「中には名誉の為、中には人生の模索の為、もしかしたら、他にも様々な目的があるかもしれない。それに共通の目的を 持った者と言っても、必ずしも相容れるものではない。ましてや学校には多種多様な人間がいるのよ。人間関係が必ずしも 円滑に進むとは限らない……」 セシルにも苦い記憶が呼び起こされた。 王に拾われ身寄りのない孤児だった。自分に対し、学校という場所は決して居心地のいい空間ではなかった。 カインやローザに出会わなければ自分はどうなっていただろう? 考えたくもないし、思いつきもしなかった。 去りゆくもの 残されるもの7
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/957.html
気付いた時の風景は先程と大して様変わりはしていなかった。まだ動ける。体の無事を確認し、辺りを見回す。 「みんな無事か!?」 一瞬、以前津波に襲われた記憶が思い出される。 ファブールからバロンへ向かう航路の際、魔物に襲われ、そのものの起こしたであろう津波に飲み込まれた。 結果、セシルは仲間と別れ、遠き地に流される事となった。苦い記憶が頭をよぎり、自然と仲間の安否が気がかりに思った。 「大丈夫だ!」 テラの強い声が返ってくる。見ればポロムとパロムも一緒だ。 (ヤンは……?) 「セシル殿……」 そう思い、新たに視線を逸らそうとすると、近くから自分を呼ぶ声がする。 「ヤン。良かった。無事か……」 「セシル殿は……大丈夫でしょうか?」 「ああ……僕はこの通り」 「違うのです……」 「え?」 体の無事を聞いてきたのだろうと思ったのだが……違うのか? 「あのものは王ではありませんでした……ならば本物の王はもう……」 それはセシルも承知であった。 「そして王を手にかけたのは、おそらくあの者でしょう……」 一息おいてゆっくりと告げる。 「セシル殿はそんな者、相手に戦えるでしょうか……という意味です」 おそらくは、最前のセシルが怒りを表したのを見て危惧したのだろう。 「此処は私達にだけ任しても……」 「いや、いい」 セシルはきっぱりと言った。 「そんな相手だからこそ自分で戦わなきゃいけないんだ。安心して……決して怒りに支配されたりは しないから」 ヤンの心配する所はそこなのだろう。 「本当に倒すべき相手はまだ此処にはいない。それまでは」 「わかりました」
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/102.html
みんなが救ってくれたこの身に、まだ生命が残っている。まだ意志が残っている。 ならば、立ち上がらなければ。 「愛する人を、失ってはいけない」 セシルを真っ直ぐに見つめてギルバートは言った。 「僕はギルバート。ギルバート・クリス・フォン・ミューア。君は?」 「僕はセシル。そして彼女は……」 「あたしはリディア。よろしくね、ギルバート」 「よろしく、セシル、リディア。……リディア、さっきはすまなかったね」 「え、ううん……いいの。かなしい気持ちは、あたしたちにもわかるから……」 先ほどまで罵倒に近いことを言った相手とはいえ、大の大人に人に面と向かってこうして謝られることにリディアは戸惑った。 しどろもどろに答えるリディアにギルバートは、優しいんだねと微笑む。 「ありがとうリディア。……セシル。砂漠の光は東の洞窟に住むアントリオンの、産卵の時に出す分泌物からできるんだ。でも洞窟に行くまでに浅瀬があって、それを越えなきゃならない。」 「浅瀬か……」 「うん、でも大丈夫。ホバー船がこのダムシアンにある。カイポまで帰るときにも浅瀬を渡っていけるはずだ。……それじゃあ、急ごう。僕はホバー船を用意してくるから、ふたりは先に外で待っていてくれ」 「わかった」 そうして、セシルとリディアは外へ。 ギルバートがひとり、ここに残される。ギルバートは空間を見渡した後、一拍の間、目を閉じ、開き、そして。 「さよなら……、アンナ」 背を向ける。 死に満ちた瓦礫を踏みしめて。ギルバートは歩き出した。
https://w.atwiki.jp/299nobe/pages/990.html
「その……魔物になっているのを直接この目で見ましたから……」 嘘はつけないだろう。それにつく理由が全くない。彼女にとってこの二人は長らくの 不安を打ち消すために現れた救世主のようにすら見えたからだ。 「よし、そうと分かったなら急ごうか!」 「ええ、早くしませんとセシルさんが……」 「え! ちょっと!?」 またもや、新たな疑問がわく。 「セシルさんって……今此処に来ているんですか?」 「え……あんちゃんの事しってのか!」 その事にパロムは驚いたようであった。 「それならば私も連れて行ってもらえますか……」 合ってどうするのだ? 彼は自分の事など知らない。そういう間柄のはずなのに…… 「どうする?」 「訳ありのようですわね……一緒にいきましょう」 そして答えが了承であった。 「はい!」 だが、今此処にセシルがいるなら猛烈に合いたい。そう思った。それだけであった。